近年は8月下旬になっても猛暑が続き「立秋とは名ばかり」とよく言いますが,立秋を過ぎると空の色や雲の形に少しずつ秋の気配が漂ってきます。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行『古今和歌集』
立秋を歌った有名な和歌です。
立秋になったからと言っても目で見る景色は変わらないけれど,拭きゆく風の音にはっと秋を感じたと歌っています。
秋は,夏とは違ってひそやかにすべるようにやってくるのです。
夕立(ゆうだち)
夏のにわか雨のこと。
夕方,急に雲が立って短時間に激しく降る大粒の雨で,雷鳴を伴うことが多い。
白雨(はくう/しらさめ)
夕立のこと。雲が薄い明るい空から降ることから。雹(ひょう)を指すこともある。
土用波(どようなみ)
夏の土用(立秋前の18日間)の頃に,遙か沖合から日本の南岸に向かってやってくる大きなうねりのこと。
遠い南の海の上の台風や低気圧でできたもので,海を渡って来る間に波頭が丸くなり,波長も長くなるので,ゆったりしたうねりに見えますが,海岸近くで高波となったり,浜辺では強い引き波になったりするため注意が必要です。
秋日照り(あきひでり)
立秋後に暑い晴天が続くこと。秋の干ばつを指すこともあります。
夏台風(なつたいふう)
日本列島が太平洋高気圧に覆われた暑い季節にやってくる台風のことで,高気圧のへりを大回りして進みます。朝鮮半島から日本海へ進むコースをとると,日本の広い範囲で大雨を降らせます。
迷走台風(めいそうたいふう)
不規則に動いたり停滞したりする,複雑な動きをする台風のこと。
台風は太平洋高気圧の外側を偏西風の影響を受けながら北上しますが,太平洋高気圧の影響が強い時は,偏西風が弱かったり北の方を通っていたりして台風の進路も決まりにくくなります。このため夏台風は停滞したり複雑に動いたりするのです。台風が高気圧圏内に入りこんだり,台風が多発して互いに干渉し合うときにも迷走台風になりやすいようです。
「台風が迷走しているわけではない」という理由で,気象庁ではこの用語は用いられません。
いなさ(いなさ)
台風の時に東南の方向から吹く南寄りの強風のこと。主に東日本で使われます。
やまじ(やまじ)
台風の季節の南寄りの暴風のこと。東日本で使われる「いなさ」に対し,愛媛県など西日本で使われます。
8月のお話
・葉月
・August
・立秋と処暑
・涼風至(七十二候 立秋~処暑)
・Grain Moon
・ラマス(Lammas Day)
参考
- 〔精選版〕日本国語大辞典
- 空の名前(高橋健司著,光琳社出版)